いつかどこかであなたの本棚をお見かけし、その真っ白く整頓された美しさに触発され、年の瀬のクソ忙しい時期に自宅を大掃除したことがあります。それでも、不真面目な僕の本棚にあなたの難しい書物はほとんどありません。これからもあまり増えないでしょう。100歳まで生きられたのは全くもって驚きです。でも、レヴィ=ストロースさん、学生時代にもっとあなたの書物を読んでいても、現在とほとんど変わらない男になっていたといまでは確信しています。
 最近は村上龍谷崎潤一郎という日本の小説家の本ばかり読んでいて、疲れたらマンガを読んでいます。それでも疲れたら迷わず眠ることにしています。あなたの偉大な書物は、日本ではフランネルのシャツを着て肩からトートバッグを提げた社会学系の大学院生でさえ読まなくなって久しいですが、つい先日『悲しき熱帯』というあなたの代表作と同名の短編集を読みました。虫の知らせだったのでしょう。書物というのは不思議なもので、いつでも死者と「対話」することができます。いつかまたあなたの重厚で目がチカチカする文章を読むかもしれませんし、読まないかもしれません。やはり、21世紀の日本に「野生の思考」は過ぎた贅沢品だと思うのです。

悲しき熱帯〈1〉 (中公クラシックス)

悲しき熱帯〈1〉 (中公クラシックス)

悲しき熱帯〈2〉 (中公クラシックス)

悲しき熱帯〈2〉 (中公クラシックス)