1年程前から刊行されていて常にAmazonのカートに入っては消え入っては消えしていたという曰くつき。坂本龍一監修のスコラをついに買ってしまった。ドビュッシーだ。音楽自体の貨幣価値が限りなくゼロに近い21世紀に、「CD1枚とブックレット100頁で9000円」という野蛮な商品だ。このスコラ(学校)の学費は高いが、この反時代的かつ教養主義的な書物?には敬意を表して正座で聴きながら読んだ。
 坂本龍一浅田彰という巨人と彼らの1/100の知性を持つ小沼純一の鼎談は非常にスリリングで、小沼氏の発言の少なさも違う意味でもスリリングだ。このレベルの発言ならオレでもできそうだ。ドビュッシーと言えば『リリィ・シュシュのすべて』や『トウキョウソナタ』でも印象的に使われており、スノッブな文科系学生の間ではおそらくバッハ以上に人気がある。かくいうオレもピアノ曲集しか聴いたことがなかったが、弦楽四重奏曲ソナタの豊穣さを前に、愛聴していたエリック・サティが「貧しい音楽」に思えてしまう。中にはドビュッシー本人!が演奏する曲もあり、家宝にしたい内容である。ブックレットには後藤繁雄こと"ごっちん"のドビュッシーを巡る断章と上記3名による推薦盤、作品一覧と年表まであって、これを暗記するとすなわち「世界一ドビュッシーに詳しくなれる」という濃密さ。「No Music, No Life」は嫌いな言葉だ。人生が霞むような至上の音楽がここにある。

コモンズ:スコラ ヴォリューム3 サカモトリュウイチ セレクションズ ドビュッシー

コモンズ:スコラ ヴォリューム3 サカモトリュウイチ セレクションズ ドビュッシー