[,w300]
 ハワード・ヒューズの青年期(第2次大戦前後)を170分(!)で描いた作品だが、誰あろうゴダールがその『映画史 1A』で彼を「メルモズよりも勇気があり、ロックフェラーよりも金持ち。『市民ケーン』のプロデューサーにしてTWAのオーナー。まるで、メリエスガリマール社SNCFを同時に経営していたようなものだ。そしてヒューズ・エアクラフトがCIAの片棒をかついで潜水艦を太平洋の底から引き上げ始める以前には、彼は RKOの駆け出し女優を土曜日ごとに、リムジンで出歩かせた。ただし、時速2マイルで。乳房を弾ませて万が一にも痛めてしまうことのないように。そして死ぬ。ダニエル・デフォーがわざわざロビンソン・クルーソーを生き延びさせたかのようだ」と鮮やかに描写している。
 良作だったので、スコセッシとゴダールの「語り」の巧拙を比べるのは止めておく。この強迫神経症かつ幼児的資本家こそ現代アメリカの病理を代表=representしていると言えなくもないが、感情移入を拒否するこの男を約3時間観続けるのは、シネフィルか暇人か本人以外には至難の業である。