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- 『潤一郎ラビリンス(4) 近代情痴集』(谷崎潤一郎)
タニザキ・ラビリンスに迷い込んで早3ヶ月が経った。中学生時分に読んだのは、一体なんだったのか(あの頃も面白かったが)。と自問自答するほど良いのですいすい通勤電車で読んでいる。
第4巻は「近代情痴集」とされている。そう言われれば、ほとんど全てのタニザキ作品は「近代情痴集」だ。もちろん、比重は「情痴」ではなく「近代」に置かれている(タニザキの「情痴」は21世紀の感性から見直すと、やはり陳腐である)。近代とは、誰もができることなら「愚」であるよりも「賢」でありたいと望んでいる時代のことだが、タニザキは『刺青』を「其れはまだ人々が『愚』と云う貴い徳を持って居て、世の中が今のように軋み合わない時分であった」という一文で書きはじめた。近代的な価値体系の転換、というか恐ろしく単純に言うと同時代批判だが、それが夏目漱石以下同時代作家のような倫理性/抽象性と無縁であることが、タニザキの特異性をさらに際立たせている。
- 憎念
- 懺悔話
- お才と巳之介
- 富美子の足
- 青い花
- 一と房の髪
- 作者: 谷崎潤一郎,千葉俊二
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1998/08/18
- メディア: 文庫
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