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『潤一郎ラビリンス(16) 戯曲傑作集』(谷崎潤一郎) タニザキ・ラビリンスもいよいよ大詰め。15巻の『横浜ストーリー』は絶版のため、しばらく読むのは後になりそうなので、さっそく最終巻を読み始め、速攻で読み終わった。次からは新潮文庫から出てる傑…

『潤一郎ラビリンス(14) 女人幻想』(谷崎潤一郎) このあたりのタニザキの「差別的」感性に深い共感を覚えてしまう。 そうさ、大概の日本人はみんな駄目さ。己はお前の言う通り十人並かも知れないけれど、大概の日本人が駄目だから従って己も駄目になるの…

『フェルメール』(2000/ノルベルト・シュナイダー) ぼくは歴史の深淵を覗き込んだ。 全油彩37作品収録。まさに一家に一冊的存在。修辞学的な講釈や、シンボルの意味作用の解読なんかよりもっと重要なことは、あの光、あの構図、そして青と黄のあの調和。き…

『潤一郎ラビリンス(13) 官能小説集』(谷崎潤一郎) タニザキが繰り返し書いているのは、男女関係が常に権力構造の中にあるということ。むしろ、ほとんどそれしか書いてないと言っていい。惚れた腫れたなんて甘っちょろいモノではない、死闘がそこにある…

『潤一郎ラビリンス(12) 神と人との間』(谷崎潤一郎) 「虚栄心をもった男がある対象を欲望するためには、その対象物が、彼に影響力をもつ第三者によってすでに欲望されているということを、その男に知らせるだけで十分である」とはジラールだが、『神と…

『潤一郎ラビリンス(11) 銀幕の彼方』(谷崎潤一郎) 「私は、自分がかねてから憧れて居た活動写真の仕事に関係するようになったことを、その歓びを感謝せざるを得ない!」 モダニスト谷崎万歳!1917年の『人面疽』はまさしく映画が生まれてからしか書けな…

『潤一郎ラビリンス(10) 分身物語』(谷崎潤一郎) 谷崎の構想力に圧倒されてしまった。ここに収められた3編は、いずれも互いに補完しあう人間同士の対立、あるいは二重人格の小説である。人生と芸術、永遠の善と永遠の悪、東洋の美と西洋の美、これらの二…

『潤一郎ラビリンス(9) 浅草小説集』(谷崎潤一郎) 浅草を舞台にした3編を収録。タニザキはこの他にも浅草を舞台にした小説を書いている。彼がボードレールを愛したのは有名だが、ボードレールが『パリの憂鬱』でパリの裏町の醜悪のなかに戦慄的な美、永…

『潤一郎ラビリンス(8) 犯罪小説集』(谷崎潤一郎) 日本で探偵小説が注目されたのは大正半ばの1918年前後のようだ。中上健次から「物語のブタ」と呼ばれたタニザキも、当然ながら探偵小説と呼ばれるものを多数書いている。たとえば『途上』は江戸川乱歩に…

『超簡単 お金の運用術』(2008/山崎元) こういうモノを読んだ。著者の投資方法は極めてシンプルなので、オレみたいなモテ男でもできると思う。ただ、金利が絡んでくるとよくわからなくなってくる。おそらく脳の資質の問題だろうか。小生が卒業した早稲田大…

『ゼロ年代 アメリカ映画』(2010/渡辺幻・佐野亨編集) 黒沢清ほかいつものメンバーで送る、ゼロ年代のアメリカ映画総括本。 「映画を観る」ことよりも、カタログやランキングを眺めることが好きなすべての人に捧げます。それにしても、あちこちで不毛な対…

『審判』(1925/フランツ・カフカ) 広く知られているように、カフカが残した3つの長編『失踪者』、『審判』、『城』はすべて未完である。 このことの意義は大きいように思う。『審判』では、主人公ヨーゼフ・Kが逮捕される冒頭と処刑される結末とが、ほとん…

『トパーズ』(1988/村上龍) だいぶ前に読んだこの短編集について何を書こうか、何も書くことがない。Bye For Now.トパーズ (角川文庫)作者: 村上龍出版社/メーカー: 角川書店発売日: 1991/11メディア: 文庫 クリック: 18回この商品を含むブログ (48件) を…

『こういう男になりたい』(2000/勢古浩爾) だいぶ昔のことだが『思想なんかいらない生活』を読んで、少し感銘を受けたので読んでみた。BOOK-OFFで100円だったのも大きい。というのはどうでもよろしいが、読んだ本は詳細にまとめる、というのも大事だろう。…

『未来型サバイバル音楽論』(2010/津田大介×牧村憲一) 21世紀のすべての似非ミュージシャン、似非アーティストはこれを読むべし。本当は、蓮實重彦の『物語批判序説』を熟読して、「芸術家になる」ということが、他人の物語をなぞっているだけだ、というこ…

『reading hacks!』(2008/原尻淳一) ひとまず良書と言っておこう。古今東西の読書論/読書術を表層的に網羅して、一般的な速読術まで紹介してある。ここのところ珍しくこの手の「ハウツー本」を読んでいて、自分でもやや辟易してきた。辟易したが、A型の性…

『RELAX HACKS!』(2010/小山龍介+小室淑恵) はいはい、こういう感じね。だいたい知ってるから20分で読める。目次だけ読めばイナフ。だが、毒にもクスリにもならない書物を愉快にする方法は既に体得している。RELAX HACKS!作者: 小山龍介,小室淑恵出版社/…

『整理HACKS!』(2009/小山龍介) 何ていうか、ちょっと面白いんだけど、オレみたいに呑気な生活してる人間にはあまり縁がない話だね。副業してるとか、PCを数台持っていてさらにスマートフォンが手放せない、って人には参考になる。じゃあ何で買ったのかっ…

『失踪者』(1927/フランツ・カフカ) カフカの任意の1ページの数行ですら、『KAGEROU』よりも面白いという現実。かつて『アメリカ』と題されていて、いまでは『失踪者』という元のタイトルに戻って刊行されている、カフカ未完の長編だ(カフカの長編はすべ…

『黒沢清、21世紀の映画を語る』(2010/黒沢清) 大島渚講座を読みたさに購入。一見、バルトの「写真」論を映像に置換えたような凡庸な映画論だが、具体的な作品を論じているところはやはりさすがというか映画監督の「視点」というものを垣間見た。カントを…

『夫婦で年収600万円をめざす!』(2010/花輪陽子) まだ未婚だがこんな本を読んだ。最後の「おわりに」でやたら自己啓発セミナーの講師みたいな文章があって正直ゾッとしたが、しばらくはこの考え方を軸にする。おそらく大枠はハズしてないように思うからだ…

『裏アンビエント・ミュージック1960-2010』(2010/三田格) これはなかなか良著。アンビエント熱が冷めやらぬオレは、前作も当然購入済み。自他ともに認めるディスクガイド・マニアなのです。『宇宙からの歌、宇宙への音』とも多少カブール内容ですが、ジャ…

『ずっと使いたい世界の料理道具』(2010/荒井康成) モテ男必携の書。日々の生活を美しくするしかない。まずはキッチンまわりから!そしてこのフライパンを購入した。ずっと使いたい世界の料理道具作者: 荒井康成出版社/メーカー: 産業編集センター発売日: …

『知的複眼思考法』(1996/苅谷剛彦) その昔、もう6年ぐらい前に友人からもらった書物を、ようやく読んだ。一時期話題になってかなり売れたようだ。400頁近くある厚さだが、内容が薄いために1時間で読み終わった。簡単にまとめると"critical reading"のスス…

『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと』(2009/シド・フィールド) 脚本術についての書かれていて、そんな体裁はとってないが、所謂「ハウツー本」と言える。参考になる部分は多く、普段映画を観ているときに、たしかにそのシークエンスが重要…

『映画への不実なる誘い—国籍・演出・歴史』(2004/蓮實重彦) 何というか、恥ずかしながらも再入門、っていうね。ほとんど、"再履修とっても恥ずかしゼミナール"ですわ。まったく再発見がなかったのは、ほぼ血肉化している証拠。ここでは、同じ作品のリメイ…

『それから』(1909/夏目漱石) 『三四郎』のそれから、つまり『それから』では代助と三千代の姦通が描かれる。だが、当然のこととして、これは『三四郎』の続編として読むべきではない。 ここで「アンコンシャス・ヒポクリット(無意識の偽善)」を持つのは…

『無趣味のすすめ』(2009/村上龍) 今月入ってから仕事以外のやることがたくさんあって、なんだか楽しい。「仕事以外のやること」といってももちろん「趣味」ではない。趣味なんかに没頭していたら一瞬でジジイになってしまう。そんなもん、犬にでも食わせ…

三四郎は徹底的して「見る人」である。それは『坊っちゃん』の主人公が無鉄砲なイメージとは裏腹に受動的な人物として描かれたことと似ている。彼は広田先生を中心とする知的サロンに加わったあとも、あくまで受動的な関わり合いしかしておらず、徹底して傍…

『坊っちゃん』(1906/夏目漱石) 漱石について考えている。もちろん漱石の研究者ではないので、彼自身というよりは彼が何を考えていたかについて興味がある。とても久しぶりに読んだ『坊っちゃん』は、1906年4月に『ホトトギス』に発表された。原稿用紙215…