ノベライゼーション形式で書かれた作品。つまり、はじめに村上龍自身が監督した映画ありきだが、現在VHS視聴できず未見。萌子役が藤谷美和子というところから、この主人公がどういう人物造形かは察しがつくと思う。
 男2人・女1人がそれぞれ一人称で語る章が交互に設けられていて、ひとつの出来事が3人の視点で語れていく。というよりも、その3人の視点や解釈がズレを起こしていて、そのズレ自体が物語を生成していくという実験的?な小説である。ひょっとしたら芥川の『薮の中』を意識したのかもしれない(村上龍の本名は村上龍之介だ)が、出来事自体が謎なのではなく主人公の萌子という女性自体が謎という点で異なる。いや、謎ではなく理解不能な「他者」なのだ。芥川には結局のところ自意識しかない。

ラッフルズホテル (集英社文庫)

ラッフルズホテル (集英社文庫)