5月はスピルバーグを集中的に観た(レンタルされていない『1941』のみ未見)のだが、やはり傑作揃いで特に「孤児」という主題は驚くべき強度で貫かれている。ただこの主題も作品を経るごとに当然変貌して一概には言えないが、おそらく『フック』以降かつて孤児だった男も大人になり、「父」としていかに家族との関係性を回復するか、という観点で描かれている(『マイノリティ・リポート』や『宇宙戦争』でのトム・クルーズが代表)。また、「孤児」というレベルも90年代以降どんどん肥大化していて、世界的な孤児であるユダヤ人(『シンドラーのリスト』)や祖国を失った人間(『ミュンヘン』や『ターミナル』)、生まれながらにしての孤児(『A.I.』)が描かれるようになった。そもそも"Home"の指示するところが"イエ"から"国家"へと変わっている。
 気になる作品に『未知との遭遇』があるが、これは一体何なのだろう。未だによくわからないというか昨日見直したばかりなんだけど、あのマザーシップがある種の転換点というか、現在のハリウッド的な「物語性よりも視覚性重視」の象徴かもしれない。トリュフォーが出演しているのも不可解なんだけど、とはいえ、近年のスピルバーグ自身は視覚性重視の映画からは離れて、どんどん陰惨な映画が多くなってる。もう戻るべき場所などどこにもない。『ユリイカ』のスピルバーグ特集も買った。巻末の作品紹介がひどい。オレの周りの人間のほうがもっとまともな批評書ける思う。
 24本の中から極私的ベスト5を考えてみた。6月はブライアン・デ・パルマ師匠とジェームズ・キャメロンを集中的に観る予定。もしくは逆にコッポラとか敢えてスコセッシとか。ゼメキスでもいい。もう何でもいい。

スピルバーグ・ベスト5】

ユリイカ2008年7月号 特集=スピルバーグ 映画の冒険はつづく

ユリイカ2008年7月号 特集=スピルバーグ 映画の冒険はつづく