• 『眠る秘訣』(2009/井上昌次郎)

 新書なんか1時間で読める。おそらく主著は『眠り科学する』なんだろうけど4000円するので今回は見送り。著者の経歴を見てみると、「世界睡眠学会連合理事、アジア睡眠学会会長、日本睡眠学会理事などを歴任」となっていて、正直笑ってしまった。
 オレは親切だから要約すると、重要なのは①脳内の「生物時計」のリズムに従う、②脳が自動的に眠りの質と量を決める、の2大原則がある。言い換えれば「規則正しい生活をする、メリハリのきいた生活をする」の2大原則だ。なんだ、当たり前のことか。睡眠時間については、基本的に人それぞれと言ってしまえばそこでハイ終了なんだけど、自分の生活リズムを考慮して最も適切な睡眠を模索するしかない。0時前に寝るようにしよう、と心掛けても終電で帰る日もあるし夜勤の人はそもそも無理だ。そもそも眠る量は脳(大脳ではなく脳幹)が自動的に決める。つまり、睡眠を最優先にする生活ほどバカらしいものはない。楽しい生活を送っていればどうしても睡眠より優先することがでてきてしまう。そんな人は規則正しく夜中3時に寝ればいい。むしろ、「あまり眠れてないから今日は多く寝よう」などとアレコレ考えていると、逆にそれがストレスになって寝付きが悪くなるときもある。つまり、睡眠について何も考えない人は理想的な睡眠を身につけている、という一種の真理が導かれる。本書は"何時間眠るのがベスト!"的なマニュアル本ではない。むしろ「結論を下すことの愚かさ」(フローベール)を知っている著者の知性を感じた。

 人生のほとんど半分の時間が、知らぬ間に睡眠に取られてしまいます。(トマス・モア)

眠る秘訣 (朝日新書)

眠る秘訣 (朝日新書)