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 4ヶ月ぶりに再見。渋谷シアターTSUTAYAの最終上映でしかも爆音上映、すべてにおいて完璧に近い映画と再認識した。「なに!『プライベート・ライアン』で爆音上映?行くしかない!」と決めたところまでは良かったが、着席して上映3分で後悔した。ノルマンディー上陸の冒頭20分間で、まるで自分が戦場にいるかのように錯覚して、極度の緊張感から後頭部に鈍痛を感じ、それが延々と最後まで持続した約3時間。いつ何時敵軍の砲弾が飛んでくるかわからない。飛んできたが最後、爆音で脳と鼓膜を負傷してしまう。たとえば最後の戦場でドイツ軍の戦車がトム・ハンクス率いる小隊が待ち伏せする市街地に侵入してくるときなど、低音が地響きのように座席に伝わってきて、緊張から吐き気を催した。一緒に観た恋人は冒頭のノルマンディー時の手榴弾、砲撃の集中的な衝撃音で左耳の鼓膜を破壊、つまり、ティーガー戦車の砲撃の衝撃音で聴覚を麻痺して前後不覚に陥るトム・ハンクスをいち早く体感していた。
 リアリティのみを追及し、ただただ空虚さだけが残る。善悪はない。勝敗もない。生と死だけがある。銃撃戦と爆発音だけがある。この大作をわずか60日で撮影したらしいからただ驚くしかない。語りの歪さ、最初と最後に挿入される逆光の透明な星条旗、すべてが脳裏に焼きつく。スピルバーグと撮影監督のヤヌス・カミンスキーはやはり天才。