• 『reading hacks!』(2008/原尻淳一)

 ひとまず良書と言っておこう。古今東西の読書論/読書術を表層的に網羅して、一般的な速読術まで紹介してある。ここのところ珍しくこの手の「ハウツー本」を読んでいて、自分でもやや辟易してきた。辟易したが、A型の性格からかシリーズ物は全て読まずにはいられないので、あと数冊読んでみることにする。
 ただ、この手の「ハウツー本」やビジネス書や新書レベルであれば、オレでさえ1時間以内で速読できる。まず、目次を読んで気になるキーワードを探してその部分を集中的に読み、あとの箇所はそれを補完する部分と仮定して、穴埋めをする感覚でザッと読むわけだ。これが一般的な速読術。これは誰でもできる。それと、本書で強迫観念のように(念仏のように)連呼される「アウトプット」という行為だが、「アウトプット」はそんなに重要なことだろうか。

 みんな、もうインプットで終わっちゃう読書はやめようよ。何かを生み出すアウトプット型の読書に切り替え、自分だけのシステムを構築して、周りを出し抜いちゃおうぜ!

 本書を要約すればこの一行になる。要は「使える」読書であり、「おいしい」読書である。実生活に活かす読書、行動に移す読書。このプラグマティックな思想は、簡単に言うと資本主義と結びついていて、要はうまいプレゼン資料を作るとか、キャリアに繋げるとか、他人よりも優位に立つとか、他人よりも贅沢するとか、せいぜいそんなところだ。つまり、目的を持って読書するわけで、それはそれで大いに歓迎するが、その目的の最終目的をよく考えるとだいたい「カネ」のにおいがする。
 オレは昨夜、寝ながら村上龍の短編集を楽しく読んでいたが、これをどうアウトプットすればいいのだろう。自分の思考や認識を一変する読書、あるいは、読書それ自体が目的、つまり「読む快楽(ロラン・バルト)」が疎外されている。というか、ハナからそんな人を相手にしていないだけなのだが・・・

READING HACKS!読書ハック!―超アウトプット生産のための「読む」技術と習慣

READING HACKS!読書ハック!―超アウトプット生産のための「読む」技術と習慣