■
- 『潤一郎ラビリンス(13) 官能小説集』(谷崎潤一郎)
タニザキが繰り返し書いているのは、男女関係が常に権力構造の中にあるということ。むしろ、ほとんどそれしか書いてないと言っていい。惚れた腫れたなんて甘っちょろいモノではない、死闘がそこにある。主人になるか奴隷になるか、死ぬか殺すか。ふたつにひとつだ。
ひとりの女性を自分の手で理想の女に仕立て上げてから、その女のもとにひざまずくという『捨てられる迄』では、『刺青』以来のモチーフを執拗に描いている。『熱風に吹かれて』は、明らかに漱石の『それから』のタニザキ版と言える内容だ。ただ、漱石になかったエロティシズムが加えられている(もちろん『それから』のほうが傑作であることは言うまでもないが)。
- 熱風に吹かれて
- 捨てられる迄
- 美男
- 作者: 谷崎潤一郎
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 1999/05/18
- メディア: 文庫
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (3件) を見る