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- 『潤一郎ラビリンス(5) 少年の王国』(谷崎潤一郎)
「少年の王国」と題した第5迷宮は、主に少年期の主人公が登場する。子どもの世界と大人の世界、現実世界から未知の世界へ、あるいは日常生活から虚構空間へ越境する少年。谷崎の重要な主題である「永遠に若く美しい母」が描写される「母を恋ふる記」は傑作。谷崎における「母」は、年老いた最後の姿ではなく、あくまで「七つか八つの子供」のころに見た若く美しい母であり、それは時に鳩に化身したり嫂だったりするのだが、端的に言い換えれば「美」の象徴である。彼が終世追い求めた女たちは全てこの永遠女性なのかもしれない。
「小さな王国」は地域通貨を題材とした異色作で、柄谷行人の「市民通貨の小さな王国」という刺激的な論考もある。併読せよ。
- 小僧の夢
- 二人の稚児
- 小さな王国
- 母を恋ふる記
- 或る少年の怯れ
- 作者: 谷崎潤一郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1998/09/18
- メディア: 文庫
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