余は好意の干涸びた社会に存在する自分を甚だぎこちなく感じた。
 人が自分に対して相応の義務を尽くしてくれるのは無論有難い。けれども義務とは仕事に忠実なる意味で、人間を相手に取った言葉でも何でもない。従って義務の結果に浴する自分は、有難いと思いながらも、義務を果たした先方に向かって、感謝の念を起こし難い。