ここ1ヶ月くらい映画を観ていない。自分の中での優先度がどんどん下がっていて、いまは読書が一番面白い。これもサイクルがあって、半年ほど前は音楽が最下層だった。部屋ではアンビエントを流すだけ、iPodは持ちあるかない。と心に決めた時期があった。音楽が本当にイヤになった頃だ。いまはそれほどイヤではない。ただ、たくさん聴いても無意味なことがよく分かった。心臓にまで届く音楽は限りなく少ないからだ。じゃあWham!は心臓にまで届いたか?オレには届いた。じゃあ心臓にまで届いた音楽をたくさん持っていればいいのか、と訊かれるとそれも違う。
 たとえばAKB48湘南乃風の音楽が死ぬほど好きで、それで人生が変わった、ありがとう!という人間はただのアホだ。だが、それを「ただのアホ」という人間が減った。というか昔は知らないが、それを好きだと言える風土が昔にはなかったような気がする。羞恥心のようなものだろうか。音楽情報番組のランキングには羞恥心がない。「レコード大賞」と「紅白歌合戦」には羞恥心がない。オレは見ていて恥ずかしいから見ないことにしている。恥ずかしいというより直視したくないからだ。そんなことを言うと村上龍みたいだけれど、ルグランやドビュッシープレスリーを聴かずに生きている人たちは、豆腐の角に頭をぶつけて死んでしまえばいいと日々思っている。