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 @早稲田松竹。たとえ、失われた家族の肖像とも言える8ミリ映像に涙しようと(過去2回ともここで泣き、今回も泣いた)、あるいはジェーン(ナスターシャ・キンスキー)とトラヴィスハリー・ディーン・スタントン)との2度目のマジックミラー越しの電話に涙しようと、あるいは愛するジョン・ルーリーが客演していようと、あるいはライ・クーダー御大が音楽を担当していても、この映画を傑作とするわけにはいかない。
 長い、というのもあるが、決定的に何かが足りない、あるいは過剰な気がする。トラヴィスの人物造形が前時代的だし、いまさら自分のルーツ(妻を含む)を探す旅、というのも通俗的だ。ただ、息子のハンターが赤い車に乗ったジェーンを見つけてから、急にサスペンス性を帯びてきて、ほとんどヒッチコック的に物語が加速するシークエンス(『めまい』です!)、またはハンターがいなくなって失望したアン(オーロール・クレマン)がゆっくりとベッドに横たわるショットは秀逸。